第5回 埼玉森林インストラクター会総会

 平成15年4月6日の日曜日、飯能市林業センターにおいて、埼玉森林インストラクター会の平成15年度総会が開催され、私も出席してきました。
 埼玉森林インストラクター会は、埼玉県在住で、森林インストラクター試験に合格、登録した者で構成される任意団体ですが、平成15年4月1日現在の会員は36名で、総会当日には24名の出席がありました。36名の会員はそれぞれ植物に詳しい方、鳥に詳しい方、昆虫に詳しい方、林業作業に詳しい方などなど多様なインストラクターの集まりとなっており、それぞれ刺激しあいながら、個々のスキルアップに努めています。
 総会では平成14年度事業報告や平成15年度の事業計画などが話し合われました。その結果、平成15年度の主な取り組みとして、「埼玉県県民の森」での森林体験教室が6回、「狭山丘陵いきものふれあいの里センター」での定例観察会が12回、都幾川村の「仁志の森」での森づくり事業が8回計画され、それぞれの担当者が決まりました。
 私は11月8日(土)、県民の森の森林体験教室「秋を彩る森林と樹木観察と木の実の播種」に参加し、また、6月8日(日)、仁志の森での植生調査を担当することとなりました。

    
西川材でつくられた飯能市林業センター             会長あいさつ(内装も西川材を使用している)
 

 総会の会場となった「飯能市林業センター」は、平成9年3月に林業者の研修、集会などの活動の充実・強化や、森林・林業に関するイベントの開催による西川林業の情報の発信など、地域の林業生産活動の活性化と西川材のPRを図るための拠点として飯能市が整備しました。
 木造2階建て、延床面積約600u、使用木材は壁板にスギ、階段にヒノキなど、地元産の西川材を約90%使用しています。
 館内には2つの会議室をはじめ、研修室、図書室、視聴覚室、展示室などの施設があり、会議などで利用することができます。また、建物そのもの、展示室を見るだけでも西川林業を知ることができますので、興味のある方はぜひ一度足を運んでみてはいかがでしょうか。
 【飯能市林業センター】 
  埼玉県飯能市阿須343−1(西武池袋線飯能駅南口から青梅駅行バス利用、飯能南高校前下車すぐ)
  TEL 0429−75−1545  FAX 0429−74−4182

      
展示室にある西川スギ                林業センターの隣を流れる入間川とソメイヨシノ



 第4回 荒川ガイドツアー

 「173分の26、この数字の意味がわかりますかあ?」との問いかけに、参加者からは答えは聞こえませんでしたが、板橋区みどりと公園課の職員の方(とても植物に詳しい)が見事に答えてくれました。173は荒川の全長173km、26は今日の集合場所(東京都板橋区の荒川河川敷)の河口からの距離26km、が正解でした。「今日は単に173分の26の地点を観察するだけでなく、1から173まで、荒川流域を視野に入れてガイドしたいと思います。」というあいさつで、荒川ガイドツアーが幕を開けました。
 平成15年3月21日春分の日、板橋区みどりと公園課が主催の荒川ガイドツアーの講師を務めました。当日はお彼岸ということで参加者が少なく5人、区職員2人と私の、合計8人のツアーとなりました。
 板橋区が平成8年に整備した生態園、平成11〜13年に整備した中規模自然地を中心に河川敷の植物や水鳥などを観察しました。植生で区分するとおおまかにヤナギ群落、ヨシ群落、オギ群落の3つの群落を観察することができました。中でもヨシ群落の下層にタコノアシもみることができ、参加者のみなさんは、そのまさしく「たこの足」を思わせる花の跡にとても興味を持たれた様子でした。観察して、日本在来の湿性植物に混ざって、帰化植物がたくさん見られることがわかりました。当日見られた主な植物と野鳥の一覧を最後にのせましたので、参照してください。

    
板橋区が整備した荒川の中規模自然地と生態園      枯れたヨシをバックに1枚


 また、荒川は甲斐(山梨県)、武蔵(埼玉県)、信濃(長野県)の県境にある標高2,475mの甲武信ヶ岳を源に東京湾にそそぐまでのうち奥秩父から続く山地を抜ける寄居町付近までが上流、入間川と合流する川越市付近までが中流、東京湾にそそぐまでが下流に区分され、今歩いている板橋区は下流に位置することや、荒川は江戸時代と明治時代の2回、人為的に流路が変更されて現在の流れになっていることなどを説明しました。
 ツアーも終盤にさしかかり堤防に上がってみると、天気がよく、遠く秩父のシンボル武甲山、そしてその奥に奥秩父の山々を見ることができました。その場で、「あの秩父山地の中に荒川の173分の1の地点があり、流れ流れて今私たちが歩いている河川敷まで到達しているんですよ。」と話しました。
 参加者のみなさんに何かしら荒川について新発見があったツアーであったことを願います。板橋区みどりと公園課の関係職員のみなさんにはお世話になり、ありがとうございました。

当日観察された主な植物 (状態 a:つぼみ、b:花、c:実)

種名 科名 状態 特徴
アメリカフウロ フウロソウ科
イグサ科 畳の原料
イガオナモミ キク科 動物散布種子
オニグルミ クルミ科 冬芽 実は食用
オギ イネ科
ガマ ガマ科
カワヤナギ ヤナギ科 b(黄)
セイタカアワダチソウ キク科 鉄道草
タガラシ キンポウゲ科 b(黄) 田辛し、田枯し
タコノアシ ベンケイソウ科
タネツケバナ アブラナ科 b(白) 種もみを水につける頃咲く
ナズナ アブラナ科 b(白) 春の七草、ぺんぺん草
ホトケノザ シソ科 b(桃) 仏様の連座
ヨシ イネ科 水質浄化

当日観察された主な野鳥

カワウ ウ科 埼玉県では希少種
ダイサギ サギ科 シラサギの一種
ツグミ ヒタキ科 冬鳥
ハクセキレイ セキレイ科 板橋区の鳥
ヒバリ ヒバリ科 さえずり飛翔
ムクドリ ムクドリ科 都市鳥



 第3回 森林活動ガイド講習会

 平成15年3月20日〜22日の2泊3日の日程で、埼玉県小川少年自然の家を舞台に、全国森林レクリエーション協会が主催する「森林活動ガイド養成講習会in埼玉」が開催されました。
 この講習会は、地域に密着した自然体験活動の案内人を養成する講習会で、8講座(講義8時間、実習13時間)を受講すると、「森林活動ガイド」の資格を取得することができるものです。
 今回、私が講師を務めたのは、「野外活動の基礎技術」という講座で、講義1時間、実習2時間の、合計3時間のプログラムを展開しました。今回、県内外から29人の方々が講習会に参加されました。

<講義>
 「野外活動の基礎技術」というテーマですので、私も初心に帰って、資料の準備、話の進め方を予習させていただきました。内容は、@野外活動とは、A服装と持ち物、B地形図とコンパス、C気象と天気図、Dロープワーク、E星座、F「読み解き散策」のすすめ、の七本立てで、1時間話をさせてもらいました。中でも特に基本となる、地形図の読み方(等高線、尾根、谷、縮尺、記号・・・)と天気図の読み方(高気圧、低気圧、温暖前線、寒冷前線・・・)について詳しく話をしました。最後にコンパスと地形図を使って、窓の外に見える官ノ倉山の方角を受講者の方々に見つけてもらおうとしたのですが、私のコンパスワークの未熟さからうまくいかずに、受講者の方々にご迷惑をおかけてしまいました・・・。

<実習1>
 最初の実習は、受講者に5班に分かれてもらい、小川少年自然の家に常設されている「クリエーティブウォーク」を体験してもらいました。「クリエーティブウォーク」は地図を見ながら、自然の家内の森林に設置されたポイントを探し出し、そのポイントにある看板に示されたテーマ(例えば切り株の年輪を数えるとか、目をつぶって聞こえる音が何かを聞き分けるとか・・・)を班員が実践して回るものです。ポイントは全部で11あり、通常は2時間のコースですが、今回は1時間に時間を限定し、各班ごとに回れる範囲で自由に回ってもらいました。
 各班ともほぼ時間通りに戻り、各班ごとに回ったコースを発表してもらいました。発表の内容、受講者のみなさんの表情から、みなさんとても楽しんでもらえたように感じました。

    
ポイント「金太郎の石」での一こま               キブシの花と雑木林

<実習2>
 2つめの実習は、簡単なネイチャークラフトの実習ということで、「落ち葉アート皿づくり」を体験してもらいました。準備したものは、紙皿、フィルムシール(図書館の本をラッピングするフィルム)、のり、はさみ、マジックです。
 まず受講者のみなさんに、外で気に入った落ち葉、枯れ枝、落ち花びらなどを拾ってきてもらい、それをのりで紙皿に仮止めし、マジックでイラストを加える人は加えてもらい、最後にフィルムでラッピングすれば完成です。落ち葉を利用するには、ちょっと時期が悪かったのですが、写真のように、みなさんステキな「落ち葉アート皿」を作成することができました。
    
完成した「落ち葉アート皿」を上に上げて           小川少年自然の家のシンボル金勝山(左のピーク)

 最後にアンケートにご協力いただき、「野外活動の基礎技術」の講座を終了しました。アンケートをみると、「たいへんよかった」というお褒めの言葉もあれば、「もう少しレベルを高くしてもよかったのでは」との示唆もいただきました。受講者みなさんを満足させるプログラムが組めれば最高なのでしょうが、その難しさを実感しました。今後とも努力して、すこしでも多くのみなさんに満足してもらえるようなプログラムを組めるようにしていきたいと思います。
 主催の全国森林レクリエーション協会、場所を提供された小川少年自然の家の関係のみなさんにはお世話になり、ありがとうございました。
 「森林活動ガイド」は今年度、他県でも実施されるようですので、興味のある方は下記アドレスまでぜひアクセスしてみてください。

 http://www.shinrinreku.jp/top/index.html



 第2回 小川町自然エネルギー学校観察会

 昨年(平成14年)12月14日、埼玉県のほぼ真ん中、比企郡小川町で「NPOふうど」が主催する、2002年度小川町自然エネルギー学校の第4回講習会に、自然観察の講師として参加してきました。
 「NPOふうど」は「自然エネルギーを始めとする地域由来の資源を循環活用することで、自然環境・社会環境に与える負荷を出来るだけ抑え、持続可能な社会をめざす」非営利組織団体で、前身の「小川町自然エネルギー研究会」が昨年7月にNPO法人化したものです。
 小川町自然エネルギー学校は、手作り太陽電池を作成したり、バイオガス技術の応用を学んだり、回ごとにテーマに沿って、風土にみあった自然エネルギーについて学ぶことができる講座です。
 今回、私が講師を務めたのは、第4回<身近な自然を活用しよう〜炭焼き・竹細工〜>のうち、自然観察の部分です。現在あまり人手が入らず放置されている雑木林や竹林が目立ちますが、そこに生育している雑木で炭を焼き、竹で竹細工をやろうというのが今回のテーマですが、私はその前段として、森林インストラクターの同僚の輪湖昇さんと、小川町ではどんなタイプの森林が見られるのか、そしてそこにはどんな樹木や野草がみられるのか、町内3ヶ所の森林を案内し、3ヶ所目の雑木林で、冬芽の観察方法について解説をしました。
 まず、町の天然記念物にも指定されている青山氷川神社の神社林を訪れました。ここでは、人手が加わらずに残された天然林(一部植栽も含む)を観察することができました。森林を構成する主な樹木はシラカシ、アラカシ、クスノキなどの常緑広葉樹で、いわゆる照葉樹林です。林床にはシロダモやヤブツバキ、ヒサカキなどやはり常緑広葉樹が多く見られ、県内に残された数少ない照葉樹林であり、貴重な森林といえます。ここでは天然林、二次林、人工林の違い、天然林の種類(照葉樹林、ブナ林、亜高山帯針葉樹林、ハイマツ林)などの話をしました。
 次に木呂子のヒノキ人工林を訪れました。ここでは、樹齢約30年のヒノキの人工林を観察しながら、林業によって国土の森林の約4割が人工林になっていること、林業の手入れが行き届かないと人工林が荒れてしまい、災害などの危険が高まること、現在、国産材の材価が低迷し、林業経営が非常に厳しいことなどを話しました。
 最後に角山の雑木林を訪れました。この雑木林は、小川町が所有する町有林ですが、近年利用されずにいたものを、「NPOふうど」が借受け、雑木林の手入れを実践している林です。ここでは、落葉広葉樹が多く見られますが、冬場は落葉しているため、慣れない人には樹木の同定が困難です。そこで、私の学生時代の恩師であり、元信州大学農学部助教授の馬場多久男先生が書かれた「冬芽でわかる落葉樹」(信濃毎日新聞社)をテキストに、冬芽の検索による樹木の同定法を説明した後、参加者に4班に分かれてもらい、実際に冬芽を検索してもらいました。検索してもらった樹木はムラサキシキブ、エゴノキ、ウリカエデ、ヤマグワなどでした。各班とも苦労していましたが、楽しみながら冬芽の同定法を学んでもらえたものと思います。
 その後、「NPOふうど」のメンバーに講師をバトンタッチし、雑木林の間伐、下刈り作業を行い、1日の行程を無事終えました。
 「NPOふうど」のスタッフのみなさん、当日の参加者のみなさんにはお世話になり、お礼申し上げます。
 「小川町自然エネルギー学校」について興味をもたれた方は、下記のホームページを参照してください。 

  http://www.foodo.org/


 第1回 まごころ農園の四季

 埼玉県秩父郡吉田町の山奥に「まごころ農園」と呼ばれる素晴らしい森林空間があります。窪の畑、雑木林、花木園の3つのエリアからなるこの農園は、近隣に住むとある夫妻が毎日のように通い、手を入れて作り上げた森林空間です。
 私は、前任地の秩父農林振興センターに勤務していた平成10年の1月から12月まで、毎月1日のペースでこの農園を訪れ、その時見られる全ての植物をフィールドノートに記録しました。その結果、1年間で、実に335種類の樹木、野草、花木、野菜など様々な植物と出会うことができました。そして、この農園は1年を通して多様な植物が共生する実にみごとな森林空間であることがわかってきました。
 それぞれの月に観察された植物や農園の様子については、現在、全国林業改良普及協会が発行している月刊誌「現代林業」に、「まごころ農園の四季」というタイトルで、毎月連載されています。興味のある方は下記の全林協・森の情報館までアクセスしてください。

 http://www.ringyou.or.jp/



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